CCPクライオ機能の効果と平面ミリングの効果について

CCPクライオ&平面ミリング事例

クライオクロスセクションポリッシャ(CCP)では試料を冷却しながらの加工を実施出来ます。加工時の熱の影響で変質してしまう試料にクライオ機能を使用する事で、加工時のダメージを軽減させた断面作製が実施出来ます。

低融点合金の加工断面(クライオ機能なし)
低融点合金の加工断面(クライオ機能あり)

上記SEM写真はU-アロイ70の断面作製事例です。通常の加工では断面に空隙が生じておりますが、⁻120℃まで冷却を行いながらの加工では断面に空隙が見られず、綺麗な断面が現れています。クライオ機能は自動で設定温度に調整され、また加工終了時には自動で室温復帰します。通常の使用時と使い勝手はほとんど変わりません。

 

平面ミリング前の鉄鋼系試料のIPFmap
平面ミリング前の鉄鋼系試料のIQmap

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄鋼系試料を鏡面研磨仕上げ加工を行ってEBSD測定を行った事例です。

IQmap, IPFmapでそれぞれ研磨痕の影響が見られます。

この試料に対して85度傾斜、4kV10分間でアルゴンイオンビーム照射による平面ミリングを実施し、再度EBSDを取得してみます。

平面ミリング後の鉄鋼系試料のIPFmap
平面ミリング後の鉄鋼系試料のIQmap

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平面ミリングにより、研磨痕の影響は除去され、IQmap, IPFmap共に精度が向上している様子が確認出来、粒内の僅かな方位差も見やすくなっています。

平面ミリングは鏡面研磨済み試料であればこのような歪層を10分程度で除去が可能です。

研磨が上手くいかなかった試料表面に対して実施する事で精度の良いEBSD測定が可能となります。

EBSD測定以外に、SEM観察において、研磨痕や小さな付着物、汚染物質除去、結晶粒界を浮かび出させる事なども可能です。

 

セラミックコンデンサのCP断面作製

試料:壊れたBluetoothイヤホンから取り出した電子回路のコンデンサ

加工条件:【CCP】8.0kV/2時間【前処理】Siウェハ―に固定後、研磨紙#800まで面出し

セラミックコンデンサを基板から外し、Siウェハーに接着後、研磨を行って断面の面出しを行った後、クライオクロスセクションポリッシャで断面を作製しました。断面をSEMで観察すると内部電極層とセラミック層が整列している様子が分かります。イオンミリングで作製した断面ではそれぞれの粒のチャネリングコントラストが良く見えており、結晶粒の評価も行う事が出来ます。

 

アワビ貝のCP断面作製

試料:美味しかったアワビの貝殻

加工条件:【CCP】6.0kV/10時間【前処理】ハンマーで貝を砕き、適当なサイズにした後、目的面を研磨紙#800まで面出し

アワビ貝は炭酸カルシウムを主成分に層構造を有しており、層の厚みが光の波長と同等なため、干渉による虹色の構造色を持つと言われています。貝をハンマーでたたき割って断面を見てみると綺麗な層の重なりが確認出来ます。

この断面に対し、クロスセクションポリッシャでの加工を実施して、SEM観察をしてみると下記のような画像が得られます。割った断面では凹凸が激しく、測長や各種の分析では障害となりますが、クロスセクションポリッシャでは綺麗な地層のような断面が作られるので、層の厚みの計測や不連続面などが容易に観察出来ます。

 

 

歯のクロスセクションポリッシャー(CP)断面作製とSEM-EDS分析

試料:親知らずで抜いた歯

加工条件:【CP】6.0kV/6時間【前処理】樹脂埋めして精密切断機で加工してから研磨紙#800まで面出し

【加工前】精密切断機で切断のみ

 上記のデータ:CP加工前

【加工後】

上記のデータ:CP加工後

クロスセクションポリッシャーで断面加工すると加工前では見えなかった歯の内部の様子を見ることができます。加工後に見える穴は象牙質にある歯髄腔という空洞です。空洞の先には神経があり、普段は歯茎などに覆われていますが、歯周病などで歯茎が下がると象牙質が露出し、穴から内部の神経に直接刺激を与えます。いわゆる知覚過敏です。

また、クロスセクションポリッシャーで加工することで大気中で汚れた表面が削られ、サンプル本来の面が出ます。そのため加工前と加工後のEDSの結果では、感知される元素の種類や定量結果でのCとCaなどの割合などが変わっていきます。

クロスセクションポリッシャーは、SEM観察やEDS分析はもちろん、他の分析装置にも有効な装置です。